ということで、少し間が空いてしまいましたが、
病気にならないための3ヶ条 その1
体のリズムを整える・1/2 の後半
🕑体内時計の整え方🕒 についてです。
ですが本題に入る前に、まずは体内時計の仕組みから。。
前提:
▪️体内時計には、大きく分けて脳の視床下部(視交叉上核)に存在する中枢時計(主時計、親時計)と、全身の臓器や細胞に存在していてそれぞれ独自の周期を持つ末梢時計(子時計)の 2種類※1がある。
▪️中枢時計は、自律神経系や内分泌系などいくつかの経路を介して末梢時計を同調させることで、全身の体内時計の統制を図っている。
そのメラトニン分泌のスイッチとなるのが 光🌞
ヒト(人類)の歴史は 700万年ほど前から始まったといわれているが、19世紀後半に人工照明が発明されるまで、そのほとんどの時間を、自然光(太陽光)の下で生活してきた。そのため、ヒトの体内時計の確立には光環境が大きく関わっている。 >> 地球時計=昼夜の明暗環境の変化
つまりこういうこと↓
目の網膜から入った光の刺激は、電気信号となり視神経を介して視交叉上核へと伝わる。
→ そこからさらに、交感神経を介して松果体に到達。
→ 松果体では、トリプトファンからセロトニンが生成され、分泌される。
このときメラトニンの分泌は抑えられるため、日中は眠気を感じることなく、体は活動に適した状態となる。
夜になると(朝の光を浴びてから約 14~16時間後)、今度は日中分泌されたセロトニンを原料にメラトニンが生成・分泌され、眠気を誘発するなどして休息・睡眠に適した状態となる。
睡眠に至ったあとは、朝になるにつれてメラトニンの消費が進み、体内時計は覚醒に向かう。
そして、翌朝再び光を浴びることでセロトニンの分泌が始まって覚醒する。
ただ、光によって脳にある中枢時計がリセットされたとしても、エネルギーがなければ全身の臓器や細胞は活動することができない。
また、ヒトでもマウスでも、食事の刺激は中枢時計のリズムに影響を与えないが、末梢時計は、食事を摂ることが刺激となってリセットすることができる。つまり、末梢時計は中枢時計による同調とは別に、食事によっても同調される。
そして一日3食の場合に、そのうちのどの食事に同調するかという問題については、一番長く絶食した後に摂る食事、つまり朝食(breakfast※3) に同調することがわかっている。
特に、血糖値を上昇すると共にインスリンの分泌を促す炭水化物(糖質)は、朝の体内時計のリセットには欠かせない。インスリンの分泌によって、代謝に深く関わる肝臓の末梢時計が刺激を受けて動き出すためである。
時間栄養学の第一人者である柴田信重教授は、消化しやすいデンプンはすぐにエネルギーに変換でき、胃や腸といった臓器の働きを活性化させるとして朝食に勧めておられます。
他にも、生の果物から摂る果糖※4は、直接的には血糖値を上げず、【朝食としては】お勧め(ただし摂り過ぎ注意!)。
また、朝食におけるタンパク質の摂取※は、メラトニンやセロトニンの元となるトリプトファンを体に取り込むという意味においてだけでなく、エネルギー代謝や筋肉の維持・合成の観点からも重要。
※動物性タンパク質には BCAA※5というアミノ酸が含まれており、これにトリプトファンの脳への取り込みを阻害する作用があるため、セロトニンやメラトニンを意識した摂取という意味では不向きともいえる。ただし、動物性タンパク質も炭水化物(糖質)とビタミンB6を一緒に摂ることによって、脳内でのトリプトファンの合成が促進される。
人間の体内時計は、ほとんどの場合 24時間よりも長いため、毎日少しずつ前進させて地球時計の 24時間周期に合わせる必要がある。
その方法としては、、
1.朝の強い光※6を浴びる。 >> 中枢時計のリセット
2.起きたらなるべく早い時間(できれば起床後 1時間以内)に朝食を食べてデンプンや果糖などの糖質※7とタンパク質を摂取する。 >> 末梢時計のリセット
3番目の要素として、運動が体内時計に影響を与えることもわかっています。詳しく知りたい方は、参考としてあげた論文や「時間運動学」などを調べてみてください。
※光も食事も運動も、どれをとっても内容だけでなく「いつ(やるか)」によって、体内時計を整えることも狂わせることもできるということを頭に入れておきましょう。
※ここで挙げている食事の内容はあくまで一例です。糖尿病などの持病をお持ちの方や体調が優れない方、通院中の方などはご自身の体調に合わせた食事をお摂りください。
なお、ここでは朝食のことにしか触れていませんが、3食を通してバランスのよい食事を心がけること、夜遅くに食べないこと(朝食の前は長時間の絶食が必要なため)は言うまでもありません。
※1…脳(視床下部)の視交叉上核にあるものを「主時計」、大脳皮質や海馬などにあるものを「脳時計」、脳以外の各臓器や組織にあるものを「末梢時計」として 3種類に分ける場合もある。
※2…メラトニンは、タンパク質を構成する必須アミノ酸の 1つであるトリプトファンから 4段階の酵素反応を経て(トリプトファン → 5-ヒドロキシトリプトファン → セロトニン → N-アセチルセロトニン → メラトニン)生合成される。つまり、セロトニンはメラトニンの原料・トリプトファンはセロトニン(およびメラトニン)の原料。というか、厳密には原料ではなく「前駆体」。
※3…breakfast の語源は fast(断食)を break(破る、打破する)
※4…人工甘味料や果糖ブドウ糖液糖などではない、天然の果糖ということ。なお、生にこだわる理由は酵素を摂れるから。また、野菜や果物には食物繊維が多く含まれるが、ジュースにするとそれが破壊されてしまい、糖の吸収スピードを高めて血糖値を急激に上げてしまうので、時間がない・皮むきが面倒くさいなどといってジュースで済ませることはお勧めしない。
※5…バリン、ロイシン、イソロイシンの総称。このBCAAの作用を利用することで運動中の疲労感を軽減したり、持久力を維持したりすることができる。なにごとも目的に応じた使い分けが大事。
※6…体内時計を同期するために必要な明るさとしては 1000ルクス以上(厚労省資料など)とも 2500ルクス以上(大半の資料)ともいわれているが、米ハーバード大学の研究によると、夜間は約 106ルクスの薄暗い光でもメラトニンの分泌が 88% 抑えられ、約 3ルクスでも 11% 抑制されるとの結果が出ている。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2270041/
↑英語がわからんせいでこの元ネタ探すのに何時間も費やしました、、💧
(日本の新聞社はなぜ出典元を載せといてくれないんだろう?)
また、この光は直接浴びずに、カーテンを開けて窓際に座るだけでも効果がある。日光浴は、体内時計を整えるためだけなら夏は 5~6分、冬は 30分程度でよいが、ビタミンD の生成についてまで考えるならば、国立環境研究所の 日照時間の推定 が参考になるかと。。
∵光の総エネルギー量=浴びる光の照度×時間(積算照度)
※7…ただし糖質の種類が大事。そして自然のものであること。
参考:
脳科学辞典
https://x.gd/cZQv1
時間栄養学(陽だまり)
https://www.mitsui.com/wellness/491/
論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/31/1/31_30/_html/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpa/24/1/24_1/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jieij/96/10/96_KJ00008230448/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/43/2/43_154/_article/-char/ja/