勃起(erection)と射精(ejaculation)は一連の現象ではありますが、実はそれぞれ全く異なるメカニズムで起こっています。それぞれのメカニズムを理解することで、勃起不全(ED)や射精障害(早漏、遅漏、逆行性射精など)の原因を推測できる場合があります。
※原因の特定(=診断)は医師にしかできないので、ここでできるのはあくまでも「推測」です。
勃起は、副交感神経を通じて、陰茎内の海綿体が血流で満たされることで起こります。
射精は、交感神経を通じて、精嚢や前立腺、精管に刺激が伝わり、これらが収縮した結果、精液が尿道に押し出されることで起こります。
【勃起のメカニズム】
①性的な刺激を受けると、副交感神経を通じて陰茎に刺激が伝わる(大脳:視床下部 → 仙髄:勃起中枢 → 陰茎)。
②一酸化窒素※1が放出され、cGMP(サイクリックグアノシン-リン酸)という物質が増加する。
③cGMPにより陰茎の平滑筋(血管壁をなす筋肉)がゆるんで血管が広がり、陰茎海綿体の血流量が増えて勃起する。
射精後や性的興奮がなくなったタイミングで、cGMPを分解するPDE5(ホスホジエステラーゼ5)という酵素が増加し、は平滑筋が収縮して血流量が減少するため、勃起が終わる。
PDE5は常に陰茎海綿体に存在しているが、増えすぎると勃起に必要なcGMPが分解されてしまい、勃起しなくなることがある。バイアグラ等のED治療薬は、このPDE5を阻害することにより勃起をサポートする。
<中枢性勃起と反射性勃起>
勃起には、中枢性勃起と反射性勃起がある。
中枢性勃起は、上記したメカニズムの通り、視覚や聴覚、触覚、空想などの刺激によって脳から信号が送られることによって起きる。一方、反射性勃起は、マスターベーションや振動などの物理的な刺激が、知覚神経を通じて勃起中枢が刺激されることで反射的に起きるため、脳は関与しない。
交通事故などで脊髄を損傷すると、脳で受けた刺激が仙髄の勃起中枢まで届かないため、勃起不全を生じることも多いが、脳からの抑制が働かずに反射性勃起を生じることもある。
【射精のメカニズム】
①精液が後部尿道に送り出される ― emission
交感神経を通じて、精嚢や前立腺などに刺激が伝わると、精巣上体にある精子は平滑筋の収縮によって精管 → 射精管 → 前立腺 → 後部尿道へと送り出される。その際、精子は射精管で精嚢からの分泌液と混ざり合い、さらに、前立腺に送られて前立腺液とも混ざり合って精液となる。
②膀胱の出口が閉まる
膀胱頚部にある内尿道括約筋が収縮することで、精液の(膀胱側への)逆流を防ぎ※2、また、尿の尿道への排出も防いでいる。射精直前までは外尿道括約筋も収縮しているため、精液は充填され、たまり続ける。
③精液が体外に放出される ― ejaculation(狭義の射精)
性的興奮が頂点に達すると、前立腺の平滑筋が収縮し、精液は後部尿道(前立腺部分)から陰茎部分の尿道に押し出され、外尿道括約筋がゆるんで体外へと放出される。
このように、副交感神経が優位になる(リラックス状態)ことで勃起が起こり、交感神経が優位になる(緊張、興奮状態)ことで射精が起こります。ただ、この 2つは明確にどこかの時点で切り替わるというわけではなく、性的興奮の高まりに伴って、必要に応じてバランスよく、徐々にスイッチしていきます。
また、上記の説明でもお分かりいただけるように、勃起や射精といった男性機能は、脳、神経、血液循環、ホルモンなどの相互作用によって成り立っているため、これらの中でどこかの機能に不具合があると、EDや射精障害が生じます。
※1 ・・・性的興奮により海綿体の細胞で L-アルギニンというアミノ酸からつくられる。
※2 ・・・糖尿病に由来する神経障害などで脳からの指令がうまく伝わらず、内尿道括約筋が締まりにくくなると、精液が逆流する「逆行性射精」を起こすこともある。
参考:
厚生労働省ファイル
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000057150.pdf
時事通信 家庭の医学
https://medical.jiji.com/medical/013-2003-01